通勤のおとも、そして読了

今日のかばんの中身

博士の愛した数式 (新潮文庫)

博士の愛した数式 (新潮文庫)

読み終えて

それほど薄いな〜と感じるほどではなかったのに、1日にして読み終えてしまった。
この作家の本を読むのは初めて。芥川賞受賞作家ですか。それは知らんかった。失礼。
とにかく、小説に数式ってなんよ、堅苦しい話だったらいやだなぁ・・と思いつつも読んでみると、意外と(また失礼)すんなり読めてしまった。「博士が愛した」ってところがポイントだな。
80分しか記憶が持たない、ということはどういうことかと想像してみる。90分前に食べた食事のことは忘れてしまう。継続して80分以上同じ作業ができないのか・・?
たとえば読書。推理小説を読み始め20分間継続していたとし、20分後の時点で読書をしているという事実は新たに記憶されるからそこからさらに80分は動作の記憶は維持できる。しかし80分経った時点で80分前に読んだ内容は忘れているので、『この人物はなぜこんな行動を?』ということになり、一体この本は何の話なのかという激しく混乱を招くことになり、結局読書という動作を継続することはできない。と思う。まどろっこしい。
服を着る、食事をする、お風呂に入るといった事故の前からの習慣は忘れてはいないけれど、事故以降出会った人の顔が覚えられない。毎日通ってくる家政婦でさえも。自分がこんな人のところに家政婦として派遣されたなら、おそらく彼を病人扱いしてしまい、邪険に思ってしまってドライな関係で終わってしまいそうだが、この話は全体を通じてとても温かい。主人公の家政婦は決して博士も自分の子ども(ルート)も邪険にはせず、対等に接しているし、博士もルートもいつも優しく応えるところ。最後まで登場人物全員の本名は語られないが、それでもよそよそしさは感じられない。
一番いいな、と思ったところは、ルートが博士と留守番をしている間に怪我をしてしまい、そのことでルートが家政婦に腹を立てた理由。『博士を信頼しないことに怒っている』ルートにとって博士は、記憶障害を抱えたちょっとかわいそうな人ではなく、自分を愛してくれ数学も教えてくれるすごいおじさん、リスペクトできる人という存在なのだということを思ったとき、自分も願わくば、子どもにそう思われたいと考えてしまった。博士は『子どもは全てにおいて大切にされるべき、おとなが子どもの権利を奪ってはいけない』と主張し、守っているからこそルートと意思を通わせることができる。だからルートからも信頼される。子どもと(子どもに限ったことではないが)こんな関係を築けたらいいなと思う。まずは相手をリスペクトすることから。